パーソナリティ障害という診断での絶望感を軽減するために





○概要

パーソナリティ障害群の診断が安易に行われすぎていて、
絶望を覚えることが多くなった。
パーソナリティ障害と言われるとどうしようもないことと思われてしまい絶望を覚えるが、
別の視点からの扱いによって前向きな治療を施すことが出来る。



◎結論

「○○性パーソナリティ障害」と診断されてしまうと、
苦しんでいる患者さん(の家族も)に強烈なダメージを与えてしまうことになりかねない。
「パーソナリティ障害」と聴くと、その人にもともと備わった人格であり、「一生そのままで変える事が出来ない」などという理解してしまい患者とその取り巻きは絶望を覚えてしまいかねない。

しかしそれをPTSD、あるいは社交不安障害、など対処可能な症状として扱っていくことは非常に高い意義があると思っている


関連してアダルトチルドレンという定義についても同じ事が言えると思っていて、
アダルトチルドレンと言われてしまうとどうしたらいいのかわからない、どうすることもできない、
という絶望的な感覚を覚えかねない。


ACについても(PTSD、社交不安障害、気分変調性障害、愛着障害、)といった対処可能な状態として扱うことが患者に希望を与えることになると思う。








境界性パーソナリティ障害→複雑性PTSD



複雑性PTSDというのは、虐待など長期にわたり反復したトラウマ体験が起こった場合に
生じる病態としてハーマンが提案したもので、未だに正式な精神科的診断としては位置づけられていないが
DSM−IV−TRにおいて、「PTSDに関連する特徴」として、
感情のコントロール障害、自己破壊的、衝動的行動、解離症状、身体愁訴、無力感、絶望、永久に傷を受けた感じ、
それまで持ち続けていた信念の喪失、敵意、社会的引きこもり、常に強迫され続けていると言う感じ、
他者との関係の障害、その人の以前のパーソナリティ特徴からの変化、などの症状が取り入れられている。



境界性パーソナリティ障害とは実は複雑性PTSDなのではないかといっている研究者もいます。
いまのところその結論は出ていませんし、それほど単純な話ではないだろうとも言われていますが、興味深い視点です。

複雑性PTSDも境界性パーソナリティ障害も対人関係面に現われる症状は似ています。


実は、複雑性PTSDの症状として挙げられているものはBPDの症状と大差がない。

BPDでも複雑性でも5つの中核的な領域
(感情コントロール、衝動コントロール、現実見当、対人関係、自己統合性)において
動揺の障害がある。

そして、境界性パーソナリティ障害の大部分に、子ども時代の被虐待体験が見られ、
特に性的虐待が目立つと言うことは良く知られている。


また、現在の状況、境界性パーソナリティ障害に対する治療とPTSDに対する治療は
カテゴリー診断に基づく治療ガイドラインによって明確に区別されている。

一般に、BPDの患者にトラウマ体験がある場合でも、
トラウマを扱うのは患者の症状が十分に落ち着き、治療関係が安定してから、
つまり通常は治療開始1年以上たってからがのぞ間意志ということになっており、
その扱いは、慎重にする必要が示されている。

これは、トラウマ症状を刺激することで治療構造そのものがこわれてしまわないように
するために必要な配慮であると言える。

こうしたことは、十分に頭に入れておく必要があるが、治療の「文脈」ということで言えば
境界性パーソナリティ障害と診断される患者の中には
複雑性PTSDとして、そのトラウマ的な文脈を
重視したほうが、はるかに治療効果があがる人達がいる。













●回避性パーソナリティ障害→社交不安障害、PTSD

社交不安障害の人の親は社交不安障害以外の不安障害を持っていることも多く
「社交不安障害」という病気そのものが遺伝するというよりも
不安障害になりやすい気質が遺伝するのかもしれません。

気質と言えば、社交不安障害は「回避性パーソナリティ障害」と質的には違いが無く、回避性パーソナリティ障害は
全般性の社交不安障害のより重度な形であるという見方もあります。

対人関係療法で治す社交不安障害  水島広子 創元社


人が怖い、社会で上手くやっていけない、社会性が無い自分にイライラする…
こういったことを回避性パーソナリティというレッテルで診断して、二度と変化できない本人が生まれ持ったものであるかのように決め付けてしまう医療を危惧している。


トラウマ体験後のPTSDとして考えていけば、社会性のなさや対人恐怖みたいなものは改善していけるという希望が持てると思うし治療者も患者も前向きに取り組んでいけるのではないだろうか









統合失調症→PTSD 


PTSDとして診断されるためには、「再体験症状」「回避・麻痺症状」「覚醒亢進症状」がいずれも一ヶ月以上続いており、
その人に著しい苦痛をもたらしているか、生活上大きな支障をきたしていることが必要です。


トラウマをよく覚えていないという人の場合、「再体験症状」はむしろ目立たず、理由の分からない「回避・麻痺症状」や「覚醒亢進症状」に悩んでいるということもあります。


なお重症例や慢性例では、幻聴や妄想がみられることもあります。
幻聴や妄想があるということで統合失調症ではないかと考えられるケースであっても、実際には重度のPTSDである場合があります。





ある友人が専門学生時代に仲間からハブかれてしまって、カウンセリングにいき「統合失調症」と診断された。
しかし彼女は休学することもなく無事に2年間通い、卒業して、普通に働いている。
推測でしかないが、彼女が「統合失調症」と診断された状態は、PTSDに似た状態でゆっくりとだけれども癒していけるものであったと考えられる。
統合失調症は発症したら基本的には一生付き合っていくものであるから。ただ寛解はするらしいので、そこらへんは微妙だが友人は何ら不都合さを感じていない毎日だといっている)