視床下部症候群≒視床下部症候群(??)

■「過食は精神病ではないのですか」と夫が質問。医師の回答は↓


現在はストレスによって引き起こされる「心身症」と捉えている。

医学的に説明すると、ストレスを感じると大脳の後ろのほうにある視床下部に伝わります。
そこには食欲を司る食欲中枢もありますので影響を受けてバランスを崩すんです。
すると空腹と満腹のコントロールができなくなるというわけです。
ま、簡単にいえばこういうことなんですが、問題はそのストレス要因です。

これをしっかりみていかないと、いくら身体の治療をしても根本的には治らないんです。

過食を幾ら抑えても根本的な要因をみていかないと治らないのです。

(過食・拒食の家族療法 福田俊一・増井昌美 ミネルヴァ書房


摂食障害は、どうみても基本的には脳機能とくに視床下部機能の異常だよ。
食欲中枢が弱い人は、まず自律神経も弱いからね。
睡眠障害や性的異常も起きやすい。

重層的な「視床下部の機能不全」といえる状態に陥ってしまうかもしれない。

摂食障害とは生理的には、視床下部の満腹中枢か空腹中枢に
一時的な異常をきたしているか、あるいはそのあたりの発達が充分でないため
比較的小さなストレスでも調節がうまく取れなくなってしまう病態が基本に違いない。

いくら大きなストレスがかかっても、この中枢が丈夫ならば摂食障害という形で病が
現れるはずがない。

摂食障害病棟 大谷純 作品社)

















視床下部症候群とは

視床下部には、内分泌機能、自律神経機能、体温調節、摂食・飲水・睡眠・情動行動など多くの機能の中枢が存在します。
このため、何らかの原因でこの部に病変を生じるとこれらの機能に障害を呈します。

これらを総称して、「視床下部症候群」といいます。




原因としては、頭蓋咽頭腫、胚芽腫、鞍上部進展を来した下垂体腫瘍など視床下部を冒す腫瘍性疾患が最も多いですが、
頭部外傷、治療目的の放射線照射、ヒスチオサイトーシスX、サルコイドーシスなどの肉芽腫性病変、結核その他の髄膜脳炎なども本症候群を起こしえます。

これらの場合、視力や視野障害、精神神経機能異常などを伴うこともあります。

器質性疾患の存在が明らかでなく、特発性と分類されるものもあります。
上記の場合、原因は明らかではないようです。

さらに神経性食欲不振症、心因性多飲症、心因性無月経などを広義の視床下部症候群として加えることもあります。








視床下部症候群の症状



2)水代謝異常
中枢性尿崩症が起こることもあり、抗利尿ホルモン(ADH)の分泌障害によって起こり、多尿、口渇、多飲などの症状が出現します。
浸透圧受容体が正常ならば飲水によって血漿浸透圧は正常範囲に維持されれますが、
同時に渇中枢の浸透圧受容体に障害が起こると飲水行動をとらず高ナトリウム血症性脱水、意識混濁、昏睡に陥ります。

無飲水性高ナトリウム血症は、口渇中枢の浸透圧受容体が障害された場合で、飲水量は低下、高ナトリウム血症を示す。
本症では浸透圧上昇に伴うADH分泌は障害されているが、体液量減少に伴うADH放出は保たれているため細胞外液量や血圧、脈拍数はほぼ正常値を示します。

抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群[syndrome of inappropriate secretion of ADH(SIADH)]は、
ADHの持続性分泌によって低ナトリウム血症、血漿浸透圧低下、尿中Na排泄増加、尿浸透圧上昇が起こりえます。



3)体温異常
視床下部障害による体温異常には、持続性低体温、発作性低体温、持続性高体温、発作性高体温、変動体温があります。
最もよくみられる変動体温は、外界の温度によって体温が2度以上変動するもので、視床下部後部の体温調節機構の異常によって起こりえます。


4)カロリーバランスの異常
視床下部性肥満 

飽満中枢である腹内側核の破壊が過食と肥満をもたらし、一方、
摂食中枢である視床下部外側野の障害はやせを引き起こします。

末梢組織からのレプチン、インスリングレリン視床下部に働き、最終的に食欲および食行動を変化させ、
また同時にエネルギー消費にも変化が起こり、肥満ややせが起こると考えられています。

視床下部性やせ(るいそう)が起こることもあり、飽満中枢の腹内側核に対し摂食中枢は外側核に存在し、摂食中枢の障害はやせを引き起こします。



5)精神神経症
視床下部の障害で種々の程度の意識障害、無動無言症、記銘力低下、指南力の障害、Korsakoff(コルサコフ)症候群、発動性の障害、情動の障害などが現れます。

間脳自律神経てんかんは発作的に起こる自律神経系の症状で、頻脈、高血圧、発汗、唾液分泌、体温異常などを特徴とします。
視神経もしばしば障害され視力低下、視野欠損をきたします。























慢性疲労症候群視床下部の役割−

Q.これらのさまざまなストレスは、視床下部の働きを抑制することがあるということですが、その結果、どのようなことが起こるのでしょうか?

A.視床下部は、脳の中で、オーケストラの指揮者のような役割を担っていて、主要な四つの分野をコントロールしています。


1.体温調節

視床下部の働きが抑制されると、体温が低くなる傾向にあります。
ほとんどの人の体温は、華氏98.6度(訳注:37.0℃ぐらい)であるのに対し、CFS/FMSの患者は、それより2〜1度低いことがしばしばあります。

これは、発熱の場合と同じように、深刻な影響を及ぼします。

身体の代謝の機能は、体温にとても影響を受けやすく、また、体温が低いことは、それ自体、疲労感を引き起こす原因となることがあります。
体温調節は、以下に示す3つの機能と共に、視床下部に組み込まれています。

それは、体温調節は生命と健康に大変重要であり、体温を調節するには、これら3つの機能が重要だからです。



2.ホルモンの機能

下垂体は、身体の主要なホルモン分泌腺をコントロールしています。
そして、その下垂体をコントロールしているのは、視床下部なのです!

下垂体に障害がある患者には、その治療のため、通常、最大8種類のホルモン剤を投与されます。
これら8種類のホルモンは、したがって、CFS/FMS患者にとっても、治療によって視床下部の機能が回復するまでの間、必要となる場合が多いのです。

残念ながら、ホルモン測定のための血液検査結果の解釈は、そのほとんどが、下垂体の障害を前提としています。
そのため、視床下部の機能が抑制されている患者の場合、血液検査の結果が正常の範囲内であっても、あてにならないことがあります。

それにもかかわらず、多くの医者は、血液検査ではホルモン分泌機能は正常であると、患者に誤った説明をしています。
しかし、臨床上、ホルモン治療によって劇的に改善されることも多いのです。



3.自律神経機能

自律神経は、血流、脈拍、血圧や、それらに関連する機能をコントロールしています。

自律神経機能に障害がある場合、手足が冷たい、低血圧である、立ちくらみする(または、低血圧と立ちくらみがある)頻脈であるなどの症状がみつかるでしょう。

さらに、神経調節性低血圧(NMH)もまたCFS患者によく見られます。

NMHの診断のための傾斜テーブル検査は、費用(約1000〜2000ドル)が高い、保険の対象とならない場合が多い、
検査により体調が悪化する患者が多いなどの理由から、特定の患者にのみ行っています。そ

れよりも、患者の症状に基づいて治療を行うほうがいいと私は考えており、それにより実際に効果が見られています。



4.睡眠

CFS/FMSの患者で、(睡眠薬なしで)途中目覚めることなく一晩8時間熟睡できる人はめったにいません。
睡眠障害は、さまざまな形で現れます。多くの人は、激しい疲労感があるにもかかわらず、就寝時間になっても頭が非常に目覚めている状態にあるため、
なかなか寝付けません。眠りについたあとも、

ほとんどのCFS/FMS患者は、夜中、とくに午前2時から4時ごろ、目が覚めてしまうことがよくあります

さらに、痛みや頻尿のせいで、睡眠が中断されることがあります。大体のところ、

多くの人は、治療を受けないと、一晩に4〜5時間しか熟睡できません。このような睡眠障害は、免疫系の抑制や広範囲の慢性痛を引き起こします。








摂食障害の生理



摂食障害とは生理的には、視床下部の満腹中枢か空腹中枢に
一時的な異常をきたしているか、あるいはそのあたりの発達が充分でないため
比較的小さなストレスでも調節がうまく取れなくなってしまう病態が基本に違いない。

いくら大きなストレスがかかっても、この中枢が丈夫ならば摂食障害という形で病が
現れるはずがない。

摂食というのは身体のもっとも基本的な生成・防御の作業である。これが不具合を
起こしてしまうのは本来とてもまずいこと、許されないことなんだ。


簡単に言えば摂食障害は、基本的には
脳機能、特に視床下部機能の異常。

ただ、視床下部は情動信号の発信源である扁桃核からの投射がとても強い。

扁桃核に関わる常道というのは衝動的というか、いわば、始原的な危険なものが近づいてきたらそわそわと不安になったり、
えさにできそうなものが近づいてきたらワクワクというようなものだけどね。

摂食障害では発信される情動そのもの揺れやすい。

それに、食欲中枢が弱い人は、まず自律神経も弱いからね。
睡眠障害や性的異常も起きやすい。

重層的な「視床下部の機能不全」といえる状態に陥ってしまうかもしれない。








ホメオスタシスの具体的な機序

渇きを取り上げるのがわかりやすい。

渇きとは
「水を必要としていることの心身の表れ、これ以上、水分不足が進むと
 からだの恒常性が保てなくなるというSOS信号」と理解できる。

水が供給されない状態でしばらく過ごしていると
体の二つの水分容器が空になる。

ひとつは、臓器中の細胞内の貯蔵物で、もうひとつは、血液など、いわば細胞外の貯蔵物なんだよ。

水が供給されない状態が続こうが続かまいが
皮膚からの汗や尿や肺からの排出物として水分は減り続けている。

その結果、細胞外液の量が減り、
血圧が微妙に下がる。

血圧の低下は通常意識には上がらないが
腎臓や心臓や血管の血圧受容器は、いち早くそれを察知して脳に危険信号を送る。

ここでホルモンを使って脳から腎臓に水分排出を引き締めるための伝令が飛ぶ。

尿量を絞り、それと同時に飲水の欲求と行動が起きる。

飲水が順調にいけば、それでホメオスタシスが回復されるのだが
それが順調に行かない場合、
血液が濃くなり、浸透圧の作用で細胞内の水分が外、つまり血管に染み出す。

そして細胞内では渇水による様々な異変が起き、かなり複雑な様相を呈してくる。

ただよほど渇水状態が続かなければ
この異変は起きない。

このように、水分の恒常性は「渇き」という巧みなフィードバックによって
保たれているんだ。

摂食の異常は、これをもう少し複雑にしたものと言える。
空腹満腹の制御。

これは水分しか関係しない渇きよりもさらに多くの制御機構を必要とする。

水分だけではなく無機物、有機物、それに固形物、流動物と多様な食材を体内に取り込まなければならない。

当然、臓器に要求される全体的な働きも複雑なものが要求される。

身体は急な行動を必要とされるときと、
休息してエネルギーを補給し、不要物を排出する時期とでは
自律神経による命令系統が変わる。

機構が複雑になれば、そこには、より多くの勘違いやごまかしや
間違いが介在する可能性が広がる。

そして、このような生理的な勘違いやごまかしや間違いが
介在する可能性が広がる。

そして、このような生理的な勘違いやごまかしや間違いは
すべて無意識のスクリーンに投影される。

つまり、身体発の妄想といえる状態が出現し、
漠然とした不安感や緊張感として無意識に波が立ち、
結果として意識がゆれる。






















視床下部と下垂体の特殊な機能障害

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肥満について
1.下垂体を全部摘出してしまったとき,あるいは視床下部の障害によっておきます
2.視床下部性肥満 hypothalamic obesity ともいわれます
3.この場合は単なる過食ではなくて,視床下部のエネルギーバランスの調節障害ですが,はっきりした原因は解っていません
4.グルコース(糖分)のホメオスターシス(意識しなくても体が自然に調節してくれること)がくずれています
5.視床下部の障害は摂食障害を生じることがあるのですが,脳腫瘍の場合は不思議なことに,過食になったり拒食になったりすることが少ないです
6.一方,下垂体のホルモン不足では,成長ホルモン欠損,男性ホルモンの欠乏でも肥満が生じます

7.もちろん,ステロイドホルモンを過量に飲んでいる場合やクッシング病でも肥満になります
8.たくさん食べているわけではないと思うのに太ってしまうという症候です
9.とにかく体重が増える,BMI (body mass index)が増えるというのが診断です


11.頭蓋咽頭腫,毛様細胞性星細胞腫,胚細胞腫瘍,髄芽腫などの治療後に多いです
12.大きな腫瘍ほど治療後の肥満は高度になります
13.子供の頭蓋咽頭腫では40%以上でかなりの肥満になるといわれています
14.太っているお母さんの子供はこの肥満になり易いともされます

16.肥満による2次合併症は,脂肪肝と肝障害,心疾患,高脂質血漿コレステロール中性脂肪が高い),糖尿病,高血圧,動脈硬化などです

18.肥満によって運動能力が低下するのは当然ですし,筋肉がつきにくいので体力不足になります
19.視床下部障害といえども結局は,食べる量が多くてエネルギーの消費が少ないのから肥満になっているので,
  ダイエットをして体を動かしてエネルギーを消費するという肥満対策の第1歩がとても大切です

22.下垂体不全の治療の中で肥満を改善するのは,成長ホルモンと男性ホルモンの補充です
23.視床下部と下垂体に詳しい内分泌内科の先生にきびしい生活指導を受けましょう
24.肥満を改善するためのよい薬はないのだと思いますが,薬物療法は内分泌内科の先生に聞いて下さい

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間脳症候群 (diencephalic syndrome) について
1.体重が増えなくてひどいやせ(痩せ)がとくちょうです,failure of thriveといわれて丈夫に育つことができない状態と表現されます
2.皮下脂肪がつかなくて骨と皮ばかりになります
3.視床下部をおかすいろいろな病気で見られますが,特に星細胞腫が1歳前後の乳幼児に発生してとても大きくなった時にでます
4.食べることが少なくなる摂食障害もあるのですが,とにかく食べても太らないのです
5.嘔吐をすることがしばしばです
6.空腹時の血液の中の成長ホルモン(GH)の値が高くなります
7.成長ホルモンの負荷試験では異常な反応が見られ視床下部からのGH-RHの分泌異常と考えられます
8.確立した治療法はありませんがどうしても食べられない時には中心静脈栄養をしてしのぎます
9.化学療法や放射線治療で腫瘍が小さくなると間脳症候群も改善することがあります
10.間脳症候群が改善した後には逆に肥満になることが多いです
11.長期生存すると10歳以下で思春期早発症(2次性徴が早く来る)になる子供が多いです

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体温調節障害 (hypthermia/hyperthermia) について
1.高体温症でもなくて低体温症でもなくて,体温が外気と同じように高低してしまうのが視床下部性の体温調節障害です
2.変温動物と同じように体温調節ができない変動体温となります
3.視床下部にある体温を調節する自律神経の働きが低下することによって生じます,
4.ものすごく珍しくて私自身も3人くらいの患者さんしか見たことがありません
5.なぜなら,体温調節ができないような視床下部障害の患者さんは重篤で生存できないような病気が多いので,体温調節ができないまま長期生存者になること自体が難しいからです
6.低体温の方が多いです,外気温が低いと34℃くらいの体温になってしまって眠りますから部屋を暖め,外出時にはムクムクに着込んで外へ出ます
7.外気温が高いと38℃を超える高熱になってしまいますから,エアコンとかで温度調節して冷やします
8.日常生活がとても不便で外出が難しくなります
9.残念ながら薬物治療は知られていません








治療は、原因疾患に対するものが基本となります。腫瘍の場合には摘出が原則ですが、手術不能例や再発例には放射線照射が行われます。

下垂体前葉ホルモンの分泌不全がある例では、それぞれのホルモンの補充療法が必要です。
視床下部機能障害の原因の除去と欠落機能に対する対症療法、そしてホルモン補償療法があります。